« 2010年4月 | トップページ | 2010年7月 »

2010年5月

2010年5月27日 (木)

『一生モノの人脈術」2010/4/2 鎌田弘毅著

 本書は、「人脈」という言葉から想像される、マメにいろいろな会合に顔を出し、名詞を配りまくって自分を売り込む……という行為からはほど遠い、およそ、人間として大切な信頼関係をいかに育てるかが、指南されている。

 考えてみれば、自分が大したことがないのに、自分以上のレベルの高い人間と同等な関係など結べるはずがない。自分にとっては重要な人間でも、果たして相手にとって、自分は価値ある人間なのか? この「価値ある」とは、べつに、「利用できるか」などという次元の話ではない。自分がほんとうに関係を結びたい相手にも、必要とされる人間になるには、どのような「修練」を積めばいいのかが、著者自身の経験を惜しみなく公開することによって示唆されている。

 また、人と接するとき、品位というものがいかに大切かも強調されている。信頼関係を育てるには、時間がかかる。そして、そういう関係をいくつか築けたとき、人の人生は何よりも豊になる。だから、「一生モノ」ということなのだろう。人は、人との関係において、成長していく。べつのタイトルをつけるなら、「慎みの人間学」とでも……。

 人間関係に悩んでいる人にこそ、本書をおすすめしたい。

*******

「お写真」は、大濠公園@福岡にできた(公園内は、富山に次いで、全国2店目という)スターバックスにて。

Img_2284_2


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年5月23日 (日)

『会計HACKS!』(小山龍介+山田真哉著)

 "hacks"とは、「問題をサクッと解決すること」。勉強、仕事、整理、時間……いろいろな"hacks"があった。とくに、小山龍介氏に注目しているが、ときに、氏自身が著者として名前を連ねていない本も、なんとかhacksと銘打たれていて、それらの本は、小山氏が関わっている本に比べて、キレ方が鈍いようにも思う。"hacks"シリーズが市民権を得てしまったので、各出版社は、どうしても、それに便乗してしまった方が「お得」と思っているのだろうか? そのあたりはよくわからない。

 とにかく、"hacks"は、今流通している、勉強、仕事、時間についての、さまざまな問題を、それこそ、新しい実用と思想によって、「すっきり」した考え方と方法を提案してきた。効果はともあれ、新しい考え方に触れて、生きることが楽になった。つまり、煩わしい仕事や問題に楽しくおしゃれに取り組めるようになった。

 さて、その"hacks"シリーズも、小山氏以外の著者による、「健康hacks」などが出て(小山氏以外の著作だと、氏の思想が十分に発揮されていないようなので、完全にhacksできていない。しかも、hacksは、テーマ選びも大切なのである)、そろそろテーマも頭打ちだろうと思っていたところに、本書が出た。「会計」!しかも、あの、山田真哉氏との共著。なるほど、そのテがあったかとうなり、目次もろくろく見ずにレジに走りました(笑)。

 中身は当然、新たなhacks満載に決まっている。「会計」とhacksが結びついたところに、すでに本書の勝利は決まっている。会計がhacksなら、それは、「普通の読者」に関係ある、つまり、「家計」と「節約」について、新たな提案がしてあるに決まっている。ついでに、会計とはなにかも学べる。著者のサイトで、家計簿もダウンロードできる。まさに、お得感いっぱいのhacksであった。
 
 どん欲で飽きっぽい読者は、本書を読み終わらないうちから次なる(小山氏の)hacksを待つ(笑)。


*******

 「けふのお写真」は、家人の釜山みやげ、チマチョゴリの「ぷー子」ちゃんと。

Img_2299


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年5月16日 (日)

『グリーン・ゾーン』

 映像がブレていたという評者がいらっしゃいましたが、ハンドカメラで臨場感を狙っているのだから、ブレるのがあたりまえでしょう(笑)。
 しかし、本作は決して「ドキュメンタリー」ではない。「ドキュメンタリー」とは、まったく異なったスタンスで作られている。伝えたいのは、なんらかの「メッセージ」ではない。「結果」が出てから作っても……などという評者もおられましたが(笑)、本作は、べつに、イラクの潔白を描こうとしたのでも、アメリカの悪巧みを描こうとしたのでもない。ただ、「戦場」を、21世紀の戦場を描こうした映画である。

 なんだ、戦争を描いて楽しむのか、けしからん。という意見は間違っている。そういうことを言い出したら、殺人を、レイプを、民族浄化を、エンターテインメント映画として描いたものはすべて「けしからん」ことになる。倫理的に正しい題材だけを選んでいたら、映画はべつの何かになってしまうだろう。

 そもそもの誤解は、エンターテインメントとはなにかということにある。それは、べつに、「あはは、あはは」と笑って観るものという意味ではない。
 フィクションとして人の想像力に訴えるものは、すべてエンターテインメントであり、その作品に対して、お金を払ってもよいと考えられる価値のあるものがエンターテインメントである。

 監督のポール・グリーングラスは、エンターテインメントの内実を、そのようにレベルアップした。彼の意図をよく理解して肉体化したマット・デイモンもしかり。

 本作は、もはや、旧式のアタマでは理解できない新しいエンターテインメントでもある。ほんもののイラク戦争帰還兵を90%起用した作りにも、それは現れている。

 さらに言うなら、そういうエンターテインメントでありながら、人の良心をテーマとして問う哲学にもなっている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年5月 8日 (土)

『バーナンキは正しかったか?』

 『バーナンキは正しかったか?』 
 デイビッド・ウェッセル著、藤井清美訳、若田部昌澄解説(朝日新聞出版刊)
 
 このテの経済に関する翻訳書で1番大切なのは、スピード感である。それは、この書の翻訳をススメた「張本人」である、気鋭の、そして、信頼するに足る経済学者、若田部昌澄氏が「解説」に書いていることでもある。

 2009年の秋、次々新聞の見出しを塗り替えるように騒がせた、アメリカ金融界の一連の、そして未曾有の、「事件」に関し、物知り顔のネット野次馬はともかく、名のある経済学者でさえも、ほんとうのところはどうなのか、誰も一般読者に、納得がいくようには説明し得なかった事柄が、若田部氏の望み通り、「スピード感のある訳文」で、心ゆくまで説明されている。 アメリカ発の、「今」を説明してくれる経済書は多々翻訳され、斬新なタイトルにつられてつい買ってしまうが、いざ読み出したら、訳文がもたもたしていて前に進めない……といった経験はないだろうか? 本書は、原書が出てからの期間も非常に短いが、文章もきびきびしていて、膨大かつ綿密な取材をしたものでありながら、読者を飽きさせることのないスピード感溢れる読み物となっている。 

 本書を読んで驚くのは、中央銀行が、国家を超えた力を持って国の行方を左右していたという事実である。そして、人間である以上、どんなに知識の豊富な人間も間違える。間違えたことが悪いのではなく、ここには、それをちゃんと記述した透明性がある。経済学者と同等の、あるいはそれ以上の知識を持って、ことを解明する、真のジャーナリストがいる国はうらやましい。


*****

 「お写真」は、5月5日、「子どもの日」に、家族恒例行事の、徒歩でいった海。

Img_2252


| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2010年4月 | トップページ | 2010年7月 »