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2010年10月19日 (火)

『シングルマン』──芸術に必要な自己批判がない

『シングルマン』(原題: A SINGLE MAN)監督: トム・フォード

 ヴィスコンティの『ヴェニスに死す』がいかに傑作かが再認識される映画である(笑)。

 確かにセンスはいい。しかし映画はスタイリッシュなだけでは成立しない。『悪人』のレビューにも書いたが、やはり、コリン・ファース演じる主人公は抽象的人物である。具体的な実感の感じられない人物が、いかに悲しみ、絶望しようと、観客は心を動かされない。いったい、コリン・ファースはどんな気持ちでこの役を演じたのか──。

 1960年代という時代をどうとらえているかも見えない。ただ、車の中にいる他人の犬に、窓の外から長いことほほを寄せて「バタートーストの匂いがする」なんてつぶやくところは面白い。実際にこういうオジサンがいたら、気味が悪い(笑)。……そうか、あまりに「こぎれいすぎて」、『ヴェニスに死す』のような滑稽さがないところが、本作を芸術から遠ざけているのかもしれない。

 芸術とは、自己批判があってこそはじめて成り立つ。それがなければ、ただのファッションである

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 「けふのお写真」は、「枯葉のなかを歩くわん太」


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