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2010年11月

2010年11月15日 (月)

『歩きながら考えよう 建築も人生も』──「連戦連敗」の思想

『歩きながら考えよう 建築も人生も』安藤忠雄 (PHP研究所、2010年11月刊)

 本書は、インタビューへの回答を編者が文章形式にまとめ、安藤忠雄の校閲、加筆を経て本にされたものである。ゆえに、読者が安藤について知りたいことが、てらいなく綴られ、ページあたりの情報含有率が高い。氏の生き方から得られるものが、いつでも参照できる座右においてもいいような書である。

 ここから学ばされることは、思考のブレなさ、集中度である。安藤ほど、子ども時代からブレない人物はいない。魚釣りやトンボとりをしていても、常に、「どうやったら、有効にできるか」を考え続けていたということは、いかなる状況、分野においても、頭を動かし続けることが、ブレない最良の道であることを教えてくれる。また、安藤忠雄の建築家としての強みとは、現場を徹底的に知り尽くしていることではないかとも思われる。

 若者向けに語られたというが、大きな活字、ページ数の少ない本書は、人生の終盤に入ったと意識する年代の人々にこそ読んでほしい。何歳になっても、夢に挑戦し続けることが、青春である。そして青春とは、「連戦連敗」を甘受しつつも、なおも挑戦し続ける生き方のことである。

歩きながら考えようBook歩きながら考えよう

著者:安藤 忠雄
販売元:PHP研究所
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2010年11月11日 (木)

『桜田門外ノ変』──無名武士たちの墓碑銘として

 『十三人の刺客』に比べると、ひどく地味な映画である。しかも、カタルシスもない。カタルシスとは、見たあと、なにかほっとしたようなさわやかな気持ちになることだが、いくら待っても、そういう場面はついぞ訪れず、終わってしまう。

 それもそのはず、この映画は、はじめからそういうものを目指していない。おそらく、「歴史」という大それたものの外で、犬死にした無名の武士たちの墓碑銘を刻むことを目指しているからだ(それゆえに、「変」に加わった武士たちひとりひとり、全員、どういう死に方をしたか、享年何歳かが文字として映し出される)。

 それは主役の大沢たかおとて例外ではない。この、立ち姿が美しい俳優は、明治維新をすぐそこにひかえた江戸という煤けた時代背景に、うっすら華を添えているが、彼も多くのほかの武士たちと同じ運命をたどる。

 吉村昭の原作より、本編の方が、よりシビアな描写であると思う。

 城の石垣がいかにも作り物のように見えるとか、いろいろアラはあるが、それでも、映画の前半で早々に展開される、井伊直弼殺害の場面は、実際に立ち会っているようなリアルさがある。


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著者:吉村 昭

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