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2010年11月11日 (木)

『桜田門外ノ変』──無名武士たちの墓碑銘として

 『十三人の刺客』に比べると、ひどく地味な映画である。しかも、カタルシスもない。カタルシスとは、見たあと、なにかほっとしたようなさわやかな気持ちになることだが、いくら待っても、そういう場面はついぞ訪れず、終わってしまう。

 それもそのはず、この映画は、はじめからそういうものを目指していない。おそらく、「歴史」という大それたものの外で、犬死にした無名の武士たちの墓碑銘を刻むことを目指しているからだ(それゆえに、「変」に加わった武士たちひとりひとり、全員、どういう死に方をしたか、享年何歳かが文字として映し出される)。

 それは主役の大沢たかおとて例外ではない。この、立ち姿が美しい俳優は、明治維新をすぐそこにひかえた江戸という煤けた時代背景に、うっすら華を添えているが、彼も多くのほかの武士たちと同じ運命をたどる。

 吉村昭の原作より、本編の方が、よりシビアな描写であると思う。

 城の石垣がいかにも作り物のように見えるとか、いろいろアラはあるが、それでも、映画の前半で早々に展開される、井伊直弼殺害の場面は、実際に立ち会っているようなリアルさがある。


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