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2011年7月14日 (木)

『ほんとうの復興』──脱原発社会への手引き

 『ほんとうの復興』(池田清彦、養老孟司著、新潮社、2011年6月刊)

 菅首相が「脱原発社会をめざす」ということを表明した(2011/7/13)。ドイツのメルケル首相についで、非常に評価できる発言であると思う。まず国家の首長がどのような国家を目指すか表明することは、政治の根幹である。それに対して、メディアは、すぐに、原発のある自治体、具体的には、各町、村長らに、意見をうかがい、それを載せている。「賛否の声」などと言いながら、いちばんヒステリックな否定の声を見出しにとり、否定的意見ばかりを載せている。
 果たしてこれらの、町、村長が、原発問題をどれほど深く理解し、行動しているのか。自分の町、村に、原発の建設を許したということは、いわゆる「賛成派」で、かつては、電力会社のいいなりになっていて、今頃、どちらについたらいいかわからず、「おらがの利益」を念頭に、玉虫色になっているのではないか。

 本書は、養老孟司との共著ながら、基本的には脱原発なのだろうけれど、文章がしどろもどろで理解しにくい養老氏の部分はさておき、池田清彦の、「エネルギーは未来を決める」という論文は、菅首相の行き方を論理的に、代替エネルギーの可能性も、具体的なデータを交えながら、説明されている。福島第一原発で最も深刻な事実は、「地域社会という国民の生活根幹を破壊した」ということである。氏は言う。「人一人の命を救うために、社会システムが崩壊したらそれこそ大変である。個々の人の命は社会にとってはかけがえのあるものだ。しかし、崩壊した社会システムを元に戻すことはできない」。
 「人が生きるということは単に命をつないでいることとは違う。生活基盤と地域社会の絆をすべて奪われ、復興のあてもない人々に、ただちに健康に被害がないし、誰も死ななかったのだから、原発は安全だ、などとどの面さげて言えるのか」

 「原子力産業は、原発を止めたら国民生活は破壊するという脅しと、原発はきちんと動かせば最も安上がりな発電装置だという屁理屈で、原発の廃止を抵抗するだろう。計画停電などというのも、原発がなくなったら大変だ、という脅しの一種かもしれない」

 そして、エネルギー利用の、短期、中期、長期的な具体案を提出している。決して単純な問題ではないが、ひとつひとつをじっくり検討し、冷静に対処していかなければならない。本書を読めば、菅首相が一見「迷走」と言われる態度となって表れている行動も理解できることと思う。


ほんとうの復興Bookほんとうの復興


著者:池田 清彦,養老 孟司

販売元:新潮社
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