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2013年2月

2013年2月25日 (月)

『世界にひとつのプレイブック』──俳優という仕事は美しい

『世界にひとつのプレイブック』デヴィッド・O・ラッセル監督・脚本 

 

 本作の出演者4名が、アカデミー主演男女優、助演男女優賞にノミネートされている。それだけのことはある作品である。ありがちなストーリーと見えたが、実際観たら、視点がまるで違っていて、今という殺伐とした時代を人間らしく生きるための応援歌であるようにも思った。

 まず、目を見張るのは、弱冠22歳のジェニファー・ローレンスの、堂々とした未亡人の演技である。若妻ではあるだろうが、金髪を黒く染めて、30歳にも見えるような風貌で、「人生に傷つけられた」女の内面を、ダミ声のような台詞回しも自在に、デニーロさえ食ってしまっているような演技で見せつける。対するブラッドリー・クーパーも、精神的にまいってしまった男をこれまた繊細に演じて、彼の物語ながら、ジェニファーの演技の受けにまわっている。「名優」デニーロも、いいオトッツァンを楽しそうに演じているし、母親役のウィーバーも、ほんわか温かなムードは、今の時代には見られないキャラクターである。

 本作を見ると、ほんとうに俳優という仕事は美しいなと思うが、集中力を欠き、技術としての演技も、脚本を読む力もない日本の俳優にはあてはまらない。

 アカデミー主演女優賞は、『ゼロ・ダーク・シティ』のジェシカ・チャスティンもよかったが、ジェニファー・ローレンスに行くような気がする。なぜなら彼女は傑出しているからだ。ジェニファーの姉役のジュリア・スタイルズも、かつては、ジェニファーのような役どころでもあったが、このふたりは前から似ているなと思っていたので、姉妹役ははまっている。それに、スタイルズの包容力がなんともいい感じでホッとする。そう、この映画は、ひさびさ、すみずみまでホッとし、さわやかな気持ちになれる映画だ。

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『ゼロ・ダーク・サーティー』──女の一念岩をも通す

『ゼロ・ダーク・サーティー』キャスリン・ビグロー監督+マーク・ポール脚本+グリーグ・フレイザー撮影監督

 CIAのウサマ・ビン・ラーディンの追跡と発見、殺害までを描いた映画だが、実際に経過した年月は10年。映画では、そこを2年間のドラマとして描いている。素朴な観客の中には、本作を、ドキュメンタリー的(まったく違った形式にもかかわらず)にとってしまい、拷問がどうの、イスラム社会の人々に対する態度がどうの、アメリカという国の考え方がどうのと言及する。しかし、私は本作で、フィクションというものの構成の仕方を学んだ。実際の情報をフィクションとして組み立てていく脚本がすばらしい。そして、女性CIAアナリスト役の、ジェシカ・チャスティンの演技も、彼女あってこその本作だと思えてくる。

 アカデミー主演女優賞にノミネートされているが、『世界にひとつのプレイブック』を見る前は、ジェシカが取るかもと思ったが、ここはやはり、ジェニファー・ローレンスの迫力に譲らざるを得ないかもしれない。

 本作のポイントは、9.11の主犯とアメリカが考えるウサマを仕留めたことではなく、このような世の中で、そのような仕事に就き、全力で戦わざるを得なかった、ひとりの若い女の姿である。最後に彼女が流す涙は、成功の喜びでもなく、死んだ同僚たちへの同情でもなく、「できればこんな世の中で、こんな仕事などしたくなかった」と言っているように思えてならない。ジェシカ・チャスティンは青白く繊細な風貌で、「女の執念岩をも通す」を体現して見せる。

 拷問シーン(「合法」と言われた「水責め」や、箱詰めなどで、よくあるマフィア映画ほど、サディスティックに描かれているわけではない。それゆえ、リアリティはある)を監視カメラのくぐもった映像で見せたり、夜間のネイビーシールズの、ウサマの隠れ家への侵入シーン(私は「吉良邸討ち入り」を思い出してしまったが(笑))の赤外線で映し出されたようなフレイザーの撮影は、リアルな質感を感じさせる。

 主人公の上司役に、「カメレオン俳優」のひとり、マーク・ストロングが扮しているが、こういうスーツ姿のオフィスワーク役は、印象的な眼差しを持つ彼のセクシーさが滲み出て、なかなかよい。

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2013年2月21日 (木)

『ウー・ウェンの中国調味料&スパイスのおいしい使い方』──気分がアガる

『ウー・ウェンの中国調味料&スパイスのおいしい使い方』(ウー・ウェン著、高橋書店、2011年5月刊)

 料理書は常に「更新」している。料理研究家の、その素材に対する、切り口にこそ、昨今の料理書の意味はある。かつての拙レビューには、「浜内千波の時代」と賞賛したものもあるが、もはや、彼女の時代は終わった(笑)。売れている料理研究家は、ブランドものの食器も高級な材料も買える。それが著書で悪目立ちしてしまったら、経済難に苦しむ読者は引く。浜内の料理本はそんな感じだ。

 いま、私がベーシック(レシピや考え方、味が安定していて、日本の家庭料理を支える)と考える料理研究家は、栗原はるみ、有元葉子、土井善晴で、これに、ウーウェンを加えたい。ウーウェンは中国人であるが、上3人の料理研究家のように、和、洋、中、偏見なく研究している。

 これらベーシックな料理研究家の本を出している版元も、彼らの料理を生かすよう、美しく造本している。

 本書は、そのなかでもとりわけ美しい本である。表紙の写真もさることながら、なかの料理の写真も配置も美しい。シンプルな材料を、エキゾチックな中国調味料とスパイス類で、どこか気分がアガるものに変えている。今ではかなりの家庭にありそうな豆板醤、オイスターソースから、買ってはみたものの、棚や冷蔵庫で眠っている、トウチ、花椒(ホワジャオ)、クミン(中東のスパイスではなかったの?)、おまけに、ミカンの皮を干した(ほんとうに普通のミカンを干すだけでできるんです!)……などなどが、見慣れた野菜とともに、新鮮な料理として蘇る。要を得た短い説明を読むたびに、毎度のことながら、ほんとうに、ウーウェンさんという人は、頭のよい人だと思う。

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2013年2月18日 (月)

『日本人のための世界史入門』──だから日本(人)は舐められる(笑)

小谷野敦著『日本人のための世界史入門』(新潮新書)

 興味本位で本書をぺらぺらやって、そのあまりの内容のなさに呆れたので、あえてレビューを書くことにした。「日本人のための」と銘打ちながら、本書はいったい、どういう人々を読者として想定しているのだろうか? 思いつくだけでも以下のような人々が想像される。

 1、著者よりバカ 2、高校レベルの知識もなく、世界史というとなんとなく難しそうで引いてしまっている人、しかし、できれば、いっきに世界史を理解したい人々 ……

 本書の著者の態度はだいたい、1のような人々を当て込んでいるのはわかる。しかし、もし、2のような人々がいるなら、本書を読んでも、世界史はいっきにわからない。なぜなら、本書の著者に世界史がつかめてないようであるから。だいたい、世界史をいっきにわかろうという態度がバカである。

 著者は、キリスト教が「よくわからない」そうである。キリスト教はユダヤ教の一派として始まり、その知識なくして、あらゆる欧米の哲学、文学を語ることは不可能である。よって、本書は、まがい物であることを自ら告白しているようなものである。だいたいこんな本を出す方も出す方である。こういう、芸能週刊誌のような切り口しか持てない著者の文章を、「世界史を教える」本として、堂々と売り出している国の文化程度は知れたものである。

 同じ新潮新書でも、元朝鮮労働党幹部が匿名で書いた、呉小元『ハダカの北朝鮮』の方がはるかにためになる。そして、あの「たもやん」(田母神俊雄)の『だから日本は舐められる』(双葉新書)の方がはるかにマシである。

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2013年2月14日 (木)

チョコレート祭り

Les Japonaises aiment "St.Valentin day", même si elles n'ont pas de petits amis...peut-être pour le chocolat...?
Festival de chocola à la place Maggiore à Bologna Novembre 2012.
ボローニャのマッジョーレ広場で開かれていた「チョコレート祭り」。まさに、「今日の日本」みたいに。もっとドロッとした感じのチョコが多かった。
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2013年2月12日 (火)

ヒヤシンス娘

 青山フラワーマーケットで仕入れた春の花を紹介します。左、ヒヤシンスの「デルトブルー」(1本365円)、右、ガーベラの「ホワイトクッキー」(1本105円)。1本ずつでもすてきでしょ? 両方ともオランダ産。オランダには、大震災のとき、こちらに来てもいいよと言ってくれた、心やさしき、Yvonneっていう友だちがいます。ヒヤシンスは、T.S.エリオットの『荒れ地』、「ヒヤシンス娘」を思い出します。

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