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2013年4月 8日 (月)

小林秀雄と河上徹太郎の対談(季刊『考える人』 2013年 05月号付録のCD)──今こそ必要な小林秀雄

 小林秀雄と河上徹太郎の対談CD(季刊『考える人』 2013 05月号付録、新潮社、201344日刊)

 「本を読もう!」みたいな本が巷に出回っている。それも、ビジネスで成功した人であったり、世の中をうまく渡ってきたような人々が書いた本だ。考えてみれば、あえて本を読もうなどということ(だけ)で本が書けるほど、本を読むことは特別なことになってしまった。しかもこれらの人々の提示する本は、大部分が読み捨てのような本であり、なんら訓練なしに読めるような類の本である。それらを何千冊読もうと、教養ある人間を作りはしない。

 小林秀雄は、重要な古典を読んでいることが自明の下地(したじ)であった時代においても、常に問題を投げかける論客であったが、今の時代も、氏の思想は重要である。いや、今こそ、小林秀雄を再読すべきだと思っている。そんな小林の、一般の若者に向かって語りかけている講演CDは、何度聴いても発見することがあり、聴き飽きるということがないが、本書の一番の価値である、付録のCDに収録されている河上徹太郎との対談は、60年来の友人同士の闊達なやりとりで、べつの魅力に溢れている。ほろ酔いかげんでもポイントは外さず、深い問題提起、引用が次々なされ、どんなエラい大学教授の講義よりも中身が濃い。

 小林秀雄の語りは、何度聴いても、発見することがあり、また、自分だけに語りかけてくれるような暖かみも感じられる。真の教養人とはこのような人々だと納得させられる。小林秀雄の語りには天才的な華麗さがあるが、河上徹太郎の抑制の効いた「受け」もすばらしい。もうこのような人々はどこにもいなくなってしまったと思うと、たまらなく寂しい。

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