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2013年8月17日 (土)

『カラマーゾフの妹』──ドストエフスキーの褌で相撲をとった作品

『カラマーゾフの妹』高野史緒著(講談社、2012年8月刊)

 エンターテインメント系の賞に、芸術的な発想で挑戦する態度は、かなりの期待を感じた。選考委員も、その大胆不敵さに、一票を投じてしまったようである。しかし、同じような、脱構築系のスタイルを持つ、京極夏彦氏と、地道な警察小説の今野敏氏は、厳しい評価をしていたと思う。ことに、今野氏は、本作をまったく認めていなかった。それでも、私は、本作者の意気込みには、どこかやられた感があったので、読み進んだ。しかし、結局、期待は外された。というのも、本作は、いい訳とは思えない、亀山訳をもとに、それを通してのドストエフスキーを土台にしているからだ。しかも、わざわざ枚数を稼ぐような持って回った余分な説明、描写も多い。そして、結末は、なにかはぐらかされたようである。つまり、本書は、ドストエフスキーの褌で相撲を取り、それを取ったら(笑)、なにもないといった作品である。いや〜、まったく残念である。また、作者の「私は文学作品をいっぱい読んでいる、文学に通暁しているプロなのだ」という臭さも、全編に漂っている。そこもいただけない。

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(おまけ)

『新訳源氏物語』初版の序(Kindle版)──Kindleに落ちていた宝物

与謝野晶子訳の『源氏物語』に付属してた、森鴎外と上田敏の、「序」であり、ゆえに、それほど長くないものであるが、両者とも、すばらしい。Kindle、Paperwhiteを所有しているものの、そのコンテンツも、いまいち、読みたいものが完全ではないし、ということで、「消灯後読書」(笑)用として使っていたが、この二作品には、脳みそを洗われた。ありがたい、黄金の落ち穂である。とくに、上田敏の「序」は、古典を新訳で読む意味を、奥深い段階で説いている。

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