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2013年10月 5日 (土)

『熊の敷石』──志の高さに感心

『熊の敷石』堀江敏幸著(講談社文庫、2004年2月刊) 

 非常に知的な作りである。エッセイかと思われるほど淡々とした筆致だが、描かれるのはエッセイが描き得ぬ、複雑な精神世界である。フランスとかモンサンミッシェルを知っていれば、理解は倍増するが、知らないなら知らないで、未知の世界へ足を踏み入れる興味がわく。どの地点でフィクションが成立するかを問うている作品であり、作者の志は非常に高いと見た。しかしながら、文庫版についている、川上弘美の解説がひどい。まったくの「印象解説」である。作者の世界を我田引水して、セクシーだわ、うっふん、とやっている。ほかに書き手はいなかったのか? これでは堀江氏がかわいそうである。

 他のレビューにあったように、本作は、フランス映画ほどキメが荒くはないし、文章はりっぱな日本語で翻訳調でもない。また、大江健三郎や村上春樹とは、テーマも文体も違って似てもにつかない。自分の理解の及ばないものに対して、無理に既知のものと結びつけなくてもいいと思うのだが……。要するに、本書を読むのに適した読者ではなかったのだ。

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