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2014年3月 3日 (月)

『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』──ディープなアメリカのフツーの人々

『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』アレクサンダー・ペイン監督 

 ジム・ジャームッシュの『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を少しだけ彷彿とさせる映画だが、本作の方が、できがかなりよい。まず脚本(ボブ・ネルソン)がすばらしい。「父と息子のロード・ムーヴィー」に、お約束のように用意されている「心のふれあい」、父母の故郷で明かされる「父の秘密」、それらが、実にあっさりと、さりげなく提示されている。

 父子が移動する、モンタナからネブラスカは、約800マイル、車で13時間。ちょうど、アメリカ大陸のまん真ん中の街から街へ移動する。見えるものは、遠くの山脈、平原、空……。朝もあれば、夕方も、夜もあるだろう。しかし、あえて選ばれた白黒は、感傷を押しつけずに、自然の美しさだけを見せる。

 登場人物の8割は老人である。かれらの顔が大写しにされる。男も女も醜い。若者はいるにはいても、ほとんど太っている。主人公一家の、中年兄弟の美しさが際立つ。醜い老人たちは、善人もいれば悪人もいる。だが、観客に、こうした老後が、「10年後のあなたにとっては、まだ他人事」「20年後のあなたには絵空事」「30年後のあなたにはあり得ない事柄」だと言っているようだ。

 だが、それらは、まぎれもないアメリカの現実であり、高齢化社会を迎えている日本でも起こりうることだ。そうした事実を露出しつつ「隠して」、映画は淡々と進む。音楽もさりげなくセンスがいい。

 温かいまなざしをしていたからと、100万ドル当たったと信じ込む父と旅する息子役に抜擢された、ウィル・フォーテが、デブのガールフレンドにさえ振られる、サエない男を演じているが、ほんとうにまなざしがやさしく美しく、心に染みいる。

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