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2014年3月13日 (木)

小山田浩子作『穴』──カフカもいい迷惑だ 

『穴』(小山田浩子著、2014年1月、新潮社刊)

 プロの純文学作家からアマチュアのできそこない小説まで、ちゃんとした人物描写、風景描写などが続けられず破綻したものを、とりあえず、「カフカのようだ」などと言ってしまうことは簡単だし、これまで、何千という「小説愛好家」たちがこの表現を使って来ただろうか。カフカもいい迷惑である。カフカがすばらしいのは、その文体である。当時の社会状況を「私的」に生きるものの内面のエクリチュールとして緊密感に満ちているのである。ただ、破綻したものを「カフカ的」と言われてもねえ……である。

 本作の作者は、確信犯である。編集者も読者も、「選考委員」も、「カフカ的」と言ってくれるのを期待しての題名であり、ストーリー展開である。しかし、「カフカ的」なのは、題名と、非リアリズムのストーリーのみである。文体は、最近ありがちの(したがって、本作者のみが責められずわけではないが)、通俗説明調である。しかし、今の日本の文学界では、そう信じているプロの作家があまたいる(芥川賞の選考委員のおおかたも、このテの方々である)ので、本作に芥川賞が与えられても、べつに驚きはしないが、純粋の文学作品の価値をはかった場合、困ったものだと思われる。

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