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2014年4月14日 (月)

『Life!』──すがすがしくもリベラルなパッチワーク

『Life!』(ベン・スティラー監督+主演、2013年、114分、原題『The Secret life of Walter Mitty』)

 ベン・スティラーという人は、ただ才能がある監督で役者だけではなく、その思想がリベラルなのである。過去の監督、出演作でも、さりげなくそのリベラルさは滲み出ていた。本作でも、露骨に出すことなく、きめ細かな箇所で、リベラルさが出ている。

 まず、写真週刊誌の『Life』の内部事情を舞台として設定したこと。そこに働く、どちらかといえば、「下っ端」のポジションにある人々を物語の中心にしていること。ネット時代のものや人物を、キーアイテムとして使っていること。……

 主人公は世界のどちらかといえば、「辺境」を旅することになるが、その土地土地で、ふれあう人々も、名もない人々である。スケボーを乗りこなす中年男もリベラルであるし、舞台役者を目指す主人公の妹が、『ヘアー』のオーディションを受ける云々、日常会話なかで語られるだけだが、あのかつての過激なミュージカルは、教会で上演されるという。『ベンジャミン・バトン』のパロディシーンが挿入されていたり、MacOSのおかげで、どこか懐かしい雪豹が、生きた姿で現れるシーンは、今という時代を生きるわれわれには、まさに「最高の瞬間」にも思える。

 そうしたエピソードは、ショーン・ペン演じる、実際には、最後まで登場しない有名写真家の撮る写真のように、さりげなく、しかし繊細に配列され、しかも、断片的である。

 『Life』というより、『ナショナルジオグラフィック』の世界のようでもある。妄想癖のある主人公の空想のハナシと見てしまえば、世界はまったくつまらなくなる。『Life』も『ナショナルジオグラフィック』も、実際、現実だけを切り取って載せてきた。

 『Life』の写真管理部で働く主人公は、その有名写真家のネガを仕事でいつも扱っているが、その写真家には一度も会ったことがない。彼は、雑誌としての『Life』の最終号の表紙を飾る写真のネガを、宝探しゲームのように意外な場所に隠して主人公に送りつけてくる。それは、ちょっとした気まぐれ、遊びである。本作は、なにか大上段なメッセージを込めているのではなくて、「人生とは、ちょっとした遊びである」と、そっとささやいている、そんな映画である。ひさびさに、わくわくした。

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