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2014年5月 5日 (月)

『とらわれて夏』──官能と愛のピーチパイ

『とらわれて夏』ジェイソン・ライトマン監督、原題『LABOR DAY』2013年、111分)

 

 こういう話は、語り方によっては、絵空事になってしまうが、俳優たちの肉体、まなざしによって、見事にリアルなものになっている。そして、愛とは……と、考えさせるように。まさに映画が映画としての意味を持つことに至っている。

 どういう仕事をしているのかわからないが、ダンスが得意で、ウツぎみの「母親」、ケイト・ウィンスレットが相変わらずいい。この女優は、演技の基礎がしっかりしていて、なにをやらせてもそれなりのリアルな世界を現出してくれる。しかも古典的な美しい風貌が、どんな女を演じても品がそこに寄り添っている。

 相手役の、「逃亡犯」、ジョシュ・ブローリンも、あえて選ばれただけのことはあって、ケイトと同じ価値を持っている。彼も、どのような役を演じようと、そこに深みや品を添えられる。

 まさに、あり得ないかもしれないけれど、夢見ても罪にはならないだろう愛の物語を演じるにはうってつけの二人である。また、重要な鍵となる、ケイトの息子がよい。年齢は中学1年生。まさに少年の終わり頃に位置する微妙な年齢である。そして、母の女としての悩みや喜びを理解していく。

 流産体質のために、情緒不安定になり、夫に捨てられた女。彼女を支える中1の息子。そんな二人の希望のない暮らしのなかに飛び込んでくる逃亡犯。ドラマチックな設定だが、そこにドラマはなくて、ただ暮らしがある。三人の一週間にも満たない日常が、愛を描き出していく。この短い期間に、この逃亡犯は、およそ夫や父親が果たすべき事柄、すなわち、家の修理から、クルマのタイヤ交換、野球のボールの投げ方まで、すべてしていく。あとには、愛が残される。

 25年ほど経ち、成長した息子を、トビー・マクガイアが、わずかな時間ではあるが演じている。それもまたリアルである。こうした評価の定まった俳優を起用することによって、観客の関心がそこにそそがれる。

 もちろん、本作のハイライトは、母子と逃亡犯の疑似家族三人が、逃亡犯の指導によって作る、ピーチパイつくりである。それは、官能と愛が見事に融合している場面である。

 ひとつ、私も、ピーチパイを作ってみるか(笑)。

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