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2014年5月 8日 (木)

『プリズナーズ』──昔、ブラピ、今、ギレンホール

『プリズナーズ』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、原題『PRISONERS』、2013年、153分)

 幼い娘を誘拐されて独自に犯人を追い詰める「主人公」ヒュー・ジャックマン迫真の演技だそうだが、やはり観客は、とくに日本の観客は、冷静に捜査を進める抑えた演技が光る、刑事役のジェイク・ギレンホールに感情移入するだろう。チラシにあったように、(アメリカでは、だと思うが)、一年間に行方不明になる児童は、およそ80万人だそうである。このような、自宅のほんの近くで、子どもが姿を消す事件が、アメリカではそう珍しくないのかもしれない。第一、アメリカは土地が広いし、家の敷地も広いうえに、地下室やら空き地、納屋なども十分あるので、誘拐した人間を隠しておくところもかなりあるし、身代金というより、最近では「虐待」のためという目的も多そうである。

 そうした状況をもとに、映画は、ゆっくりと物語を描き出していく。田舎町の様子、主人公一家の状況(近所に住む友人一家との感謝祭のごくあたりまえの、心温まる交流)、そして、ちょっとしたすきに、主人公と、その友人の子どもの、二人の少女が姿を消す。

 腕利きの渋い刑事が登場する。この役は、『グランド・イリュージョン』で、マーク・ラファロが演じた役を彷彿とさせるが、ラファロが演じた刑事には、プライベートの背景があったが、ギレンホールが演じる刑事は、なんらプライバシーが出てこない。ただ、一度も犯人を取り逃がしたことのない優秀な刑事であることしかわからない。とくにエキセントリックでもなく(むしろ、この、かつては刑事が演じたキャラクターを、本作では、被害者の父親のジャックマンが演じている)、捜査の基本に忠実かつ注意深い、慎重、というだけである。

 ギレンホールは、おそらく筋肉もつけ、体重も増やして、この役にのぞんでいる。そしてこれまでの彼にもありがちであったように、実年齢より上の年齢の設定で出ているような気がする。しかしどうしても、若さが覗く。それがこの俳優の魅力のひとつであるが……。

 さて、物語も、複線をうまく使い、なるほどと頷かせるトリックで、よくできている。脇も、さりげなく豪華に固められている。容疑者役も、割に合わない役だとは思うが、ポール・ダノを起用することによって、ほんとうはどうなのかわからないといった状況をうまく表し得たと思う。

 2時間半という長さを使って、うまくリアリティを出している。いま、似たような映画、『セブン』『ゾディアック』(これにもギレンホールが出ているが)を思い出すが、本作が抜きんでているような気がする。とくにオチは、誰にも思いつかないと同時に、事件の核心を突いている。

 それしても、猟奇的な事件を描いた作品には、若さとか美とかいった魅力を持った刑事役の俳優が必要だと思うが、その昔は、ブラッド・ピッドでも、いまは、ギレンホールなのだろう。

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