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2014年9月

2014年9月20日 (土)

プラド美術館の目玉

 プラド美術館の目的は、ベラスケス『侍女たち』(1656年)。『プラド美術館の三時間』の著者(エウヘーニオ・ドールス)に言わせれば、美術館の前にある樹木も、「世界の名木」なんだそうである。この、自画自賛的スペイン人の評論家の言葉を待つまでもなく、あたりはたいへん心地よい雰囲気に包まれている。

「あたかも画家は、自分が表象されている絵のなかに見られると同時に、自分が熱心に何かを表象している絵を見ることができないとでもいうように。彼は、両立しがたいこの二つの可視性の境界に君臨しているのである。

 画家は顔を心もちまわし、頭を肩のほうに傾げて見つめている。目に見えぬ一点を凝視しているのだ。けれどもわれわれ鑑賞者には、それが何か容易に指摘することができるのである。その一点こそ、われわれ自身、われわれの身体であり、われわれの顔であり、われわれの眼であるからだ」(ミシェル・フーオー『言葉と物』渡辺一民・佐々木明訳、新潮社、1974年、p.27)

" Comme si le peintre ne pouvait a la fois etre vu sur le tableau ou il est represente et voir celui ou il s'emploie a representer quelque chose. Il regne au seuil de ces deux visibilites incompatibles.

    Le peintre regarde, le visage legerement tourne et la tete penchee ver l'epaule. Il fixe un point invisible, mais que nous, les spectateurs, nous pouvons aisement assigner puisque ce point, c'est nous-memes : notre corps, notre visage, nos yeux." (Michel Foucault "Les mots et les choses". p.20 (Editions Gallimard, 1966)

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2014年9月18日 (木)

『グレート・ビューティー/追憶のローマ』──反ローマ映画 (★★★)

『グレート・ビューティー/追憶のローマ』パオロ・ソレンティーノ監督、2013年、原題『LA GRANDE BELLEZZA/THE GREAT BEAUTY』) (2013)

 さまざまな偉大な先達へのオマージュが折り込まれている作品と見たが、とりわけ、くっきりと明確なのは、主人公が、本来は作家を目指しながら、「ジャーナリスト」で生計を立てている、主人公は、まさに、『甘い生活』のマストロヤンニである。そして、最後、作品を「書き始める」ところに戻るのは、作中でも何度か言及された、プルーストの『失われた時を求めて』である。

 本作を、カトリック的な映画と取ってしまう人は多いが、むしろ、そのカトリックを茶化した、大胆な反カトリック映画である。そして、ローマに対しても、賛美ではなく、挑戦である。帝国時代から始まり、ルネッサンスを経過して、ありとあらゆる芸術的富を蓄積してきたローマは、未だ、その「富」を使い切れずにあえいでいる。その断末魔を描いたものと見た。

 ま、それはそれでいいのだが、私がいまいち酔えなかったのは、トニなんたらっていう役者は知らなかったが、どうもキャストたちに魅力がない。マストロヤンニも、ヘルムート・バーガーもおらず、ジャン・カルロ・ジャンニーニも老いぼれてしまった。イタリア映画は死んだ。死んで、ではどういう作品ができるのかと言えば、それを未練たらしく追求した映画でしかない。

 唯一印象的なのは、数分もないカットの、夜の階段ですれ違う、ファニー・アルダン「その人」である。

 「ボンヌ・ニュイ(おやすみなさい)、マダム・アルダン」

 すでに数歩階段を下りていたアルダンはふり返り、「どなたでしたっけ?」というような表情を一瞬浮かべる。ほんの少しの間ののち、微笑し、

 「ボンヌ・ニュイ(おやすみなさい)」と答えて去っていく。それだけの場面である。アルダンはかつてブルネット(黒髪に近い髪)であったが、その場面では金髪であった。白人は白髪になると、黒髪系でも金髪に染めてしまう人が多いが、その類である。

 本作に与えられた数々の映画賞は、フェリーニやマストロヤンニに与えられた賞のように思えてならない。

****

余談ですけど、私もかつて、『甘い生活』を「パロった」小説を書いたんですけどね〜(笑)(文芸誌『すばる』(集英社)の1990年11月号だったかな〜?)本にして欲しかったわあ〜(涙)。

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2014年9月16日 (火)

『フライト・ゲーム』──うまい!(★★★★★)

『フライト・ゲーム』ジャウマ・コレット=セラ監督(2014年、原題『NON-STOP』

 飛行機の内部はかっこうの密室で、このテの映画はよく作られている。たいていは、ハイジャックされ、その犯人(グループ?)とどう戦うかがドラマの焦点になってくるが、もうそういう単純なものでは今の観客はついて来ない。リーアム・ニーソンも、似たような、屈折した孤高公務員(CIA、航空保安官などなど)が、犯人と戦う、という役柄をこなしてきたので、「またか」感が否めない。しかし、この、どう見ても、「アイルランド生まれ」(たとえ「米国籍」の役柄でも)に見えてしまう長身のオジサンには、ゆったりとしたホームドラマは望めないのか。渋いカオして、全身を使って戦うしかない。

 しかし、本作、なかなかうまいのである。犯人は二人組だが、二人の事情はそれぞれ違う。犯人が姿を現すまでがまったく読めない。いかにも怪しいやつは、たいてい犯人ではないが、一度疑った人物が犯人なのだが、その疑った理由が、真相とは違った疑いなので、さらに読めなくなる。

 機内の緊迫感も、でティールを抑えながら、きめ細かに作られている。ジュリアン・ムーアがうまい。彼女は、結局、最後まで職業はわからないが、謎の女は謎なりに、シロであることがわかる。謎の女ながら、微妙な感情をよく表現している。こうした物語に必要な、ロンドンで待つ父親に会いに行く、幼い少女も乗り込んでいるが、彼女への優しさの表出なども、この女優の奥に潜む優しさが滲み出て、ほっとさせられる。

 航空法の細かい紹介や、スマートフォンのプログラミングなども、一般人が知らない知識も紹介しつつリアリティあるドラマにしあがっている。

 最後のクレジット+音楽も、劇的余韻を定着させて、よい。

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2014年9月10日 (水)

東浩紀『弱いつながり 検索ワードを探す旅』──看板に偽りアリ(★)

『弱いつながり 検索ワードを探す旅』東浩紀著(2014年7月、幻冬舎刊) 

 期待はずれのことが多いので、東浩紀の本はもう買うまいと思ったが、つい、帯にあった、「人間関係を大切にするな!」「友人に囚われるな!」という「コピー」につられて手に取り、冒頭の「はじめに」をざっと見て、ふだん自分の感じていたことでもあったので、より深い追求がなされているのかも、と期待して、リアル書店で本書を買ってしまった。そして、Amazonを見たら、発売されてまだそれほど経っていないのに、30個のレビューがあったので、売れているのだろうと思った(Amazonのレビュー数(「やらせ」でないもの)は、「だいたい」、売り上げの目安となる)。それで大急ぎで読んだ。

 結果は、帯に書かれていた「コピー」が、最高で(笑)、それ以上のものはなにもないどころか、それに沿った内容でもなかった。本書は、以前の『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』と内容的に重複しているものであり、大幅加筆しているとはいえ、出版社のPR誌(初めて聞いた名前であるが)に連載されていた、あまり問題意識を持っていない人々(主に若者)に向けて書かれたごく軽いエッセイがもとになっている。それだから、どう加筆訂正しても、奥深い内容にはなりっこない。

 他の、厳しい評価をされているレビュアーの方々(約3名ほど(笑))が書かれているように、本書は、「百聞は一見にしかず」を、「ネット」的に言い換えているものにすぎず、しかも、寺山修司の「書を捨てよ街に出よう」と同じ主張であり、寺山の方がまだ純粋なものがあった。

 著者は、東南アジアなどの、発展途上国を旅しながら、結局は、当地の高級ホテルに泊まりながら、高い料金のスマホ(スマホは、海外で使うと、wifiでないかぎり、異常に高い料金が発生する。若者のみなさん、気をつけてください)を使いまくって、これだけは、「切断しないでおくべきだ!」と、ご都合主義な主張をしている。

 著者はいかにも新しいアイディアのように、福島を観光地化するべきだと主張しているが、福島は、すでに「観光地化」され、大手でない旅行会社が、被災地をめぐり、被災者の仮設住宅で彼らの言いたいことを聞き、放射能計で放射能を測るツアーを売り出している。現に私の友人はそれに参加した。80代の老人も何人も参加していたそうである。

 また、私は、一週間前に、おもに北スペインの旅行から帰ってきたばかりだが、「均一化」されているはずの、「スタバ」などは、現地によってサービス内容が大きく異なり、そこには、現地ならではの「習慣」が生き残っている。わざわざ「偶然」に身をゆだねなくても、そこには、行ってみなければわからない生活がまだまだある。

 私は、20年前からホームページを開き、ネットにアクセスしているが、確かに最近は、均一化が著しい。昔は、検索エンジンは、exiteなど、自分で登録しなければならなかった。そんな私が危惧するのは、検索は場所や言葉を換えても、エントロピーの増大(均一化)から逃れられないということである。

 著者は、妻子を持ち、つまり、普通なら小市民化してしまうところを(そうなった方が家族的には、幸せなのだ)、なんとか、前衛であろうとイキがっているように見える。本書の文章は、なによりその「言い訳」めいている。

 若者よ! 騙されてはいけない! 著者は、何も手放してはいないフツーの家族持ちの、しかも一般市民よりは多少ゴージャスなことができる、オジサンなのだ(笑)。

 

 で、まあ、星2つかな〜と思ったが、星5つの人もかなり多く、「平均点」が高めになっているし、星1つが1つもないので、やはり星1個にした(笑)。

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2014年9月 7日 (日)

スペイン旅行の帰り道

でも、やっぱり、フランスに戻るとほっとしました(笑)。ものすごくおいしいというわけではないけれど、エールフランスの機内食はやはり、安心の味。
シャルルドゴール空港は、工事もすっかり終わり、すばらしくきれいな空港になってました。あまりに広く、「2Eの乗り場はどこですか?」と聞くと、「あなたが今いる場所ですよ」と言われました(笑)。
必要上、かなりおフランス語を使いました。
帰りは乗り換え時間が短く、「駆け込み乗機」なので、そんなときは、機内マガジンを見て、ゆったり機内ショッピング。
わん太のおみやげは、真っ先に、「これください!」。20ユーロなれど、気にしない(笑)。JALと違って、エールフランスは、免税品を通路をカートを引いて売りに来ない。買い物したい人は、売店まで来てください。それは、トイレの前にどっかと置かれたカートで、その間中、ひとつのトイレは塞がれたまま。
「このクマくださ〜い!」。妹も、迷った(ここがいけない(笑))あげく、自分の犬に、クマを買うことにしたが、1個しかなかった(笑)。
免税品で一番安いのは、「フリスク」のようなミント菓子で、エールフランスのマークがついているやつ。1ユーロ。「私はばらまきおみやげ用に、4個買う」。妹も、2個買おうとした。しかし、「3個しかあっりません!」「じゃあ、3個ください」。で、妹に1個あげた。
今度は、ニューヨークへ行きたい。「口直しに」というか……(笑)!!
友人には、いろいろなところへ車で連れて行ってもらって、食事などもごちそうになって、たいへんお世話になりましたが、やはり……旅は、冒険と自由!……なのでした。どうも、すみませ〜ん(先代林家三平式に)。
ちなみに、飛行機の窓から見える景色は、シャルル・ド・ゴール空港のあるロワシーの村。渋澤龍彦訳の、超ポルノ小説、『O嬢の物語』の舞台となったところです。余分な参考までに(笑)。
以下、山口百恵の『イミテーション・ゴールド』の節で。
♪ バターがちがう 小麦がちがう
 技術がちがう〜
 ごめんね〜 パリの味とまた比べてる〜
(写真はのちほど……)

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2014年9月 6日 (土)

ティッセン・ボルネミッサ男爵の趣味

 8月26日(現地時間、快晴)午後、マドリッドのプラド美術館を観たあと、ティッセン・ボルネミッサ美術館に寄る。

 スペインにおける、トーマスマン的な世界。1920年代、ドイツの鉄鋼財閥と、ハンガリー貴族の流れを汲む、ティッセン・ボルミネッサ男爵親子が集めた作品を、息子の結婚相手の国にて披露、のち、スペイン政府が作品をすべてを買い取った美術館。父が古典作品を、息子が近代絵画をおもに収集したが、とくに息子の男爵は、趣味がいいと思われる。有名画家の作品が、複数あるいは、単数あるが、たとえば、ダリはおとなしく、ピカソも抑制が効き、バルチュスも、エロスが抑えられ、シーレもかわいらしく、ただ一点のドガの踊り子は、これ以上にないというほど、緑がかった青のチュチュが、鮮やかである。ボローニャのモランディも御座(おは)します。

 全部で、おいくらかしら(笑)?

 西の果て青き緑の秋の風

Berchus

Doga

Morandi

Picaso

Shere

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