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2014年10月24日 (金)

『フランク』──人間にとって「顔」とはなにか(★★★★★)

『フランク』(レニー・アブラハムソン監督、2014年)

 安部公房のテーマのようである。あるいは、ベケットの全身砂に埋まった人物は、「体がない」状態で、セリフをしゃべる。しかし、それでも、どこか安心感がある。その「顔」が、隠されていて、その代替物として、びっくりハウスを思わせるようなかぶり物があったら、その人物のアイデンティティーをどのように受け入れたらいいか──。本作はコメディータッチながら、哲学的主題について考えさせる映画となっている。

 かぶり物を脱がないフランクとバンド仲間が、作品を作っていくというストーリーが中心になっているが、その曲作りや、バンド仲間たちのキャラクター、生活も紋切り型ではない。また、次々に形をなしていく曲も、非凡である。

 本作には、どこをどう探しても、紋切り型はひとつもなく、映画は、観客の期待も不安も裏切りながら、「大団円」に向かう。そう、本作は、ツィッターなどの書き込み画面もうまく利用して、軽いタッチの小品に見せながら、実は、「大団円」へと向かっていく。それは──。

 それは、誰もが、心の中で期待している、「フランクの中身」、「フランクのほんとうの顔」の露呈である。

 ひゃ〜、フランク役のマイケル・ファスベンダー、「世界一ハンサム」(そういう評価はいったいどのように決めるのか疑問だが(笑))との触れ込みだが、変態そうで(『シェイム』を観たせいか(笑)。これも傑作であるが)あまりすきではなかった。しかし、んー、やっぱりそうか、である。はい、認めます(笑)。彼は、本作で、「世界一のハンサム」を証明してしまったようである。

 しかし主役は、あくまで、フランクとバンド仲間に、ひょんなことから関わり、成長する(!)、ドーナル・グリーソンである。彼のトッポさあっての、フランクであるような気がする。シテとワキ。これほど完璧な例はまず、ないだろう。全体にイギリスっぽい映画ではあるが、ファスベンダーのドイツの血(アイルランド系の母とドイツ系の父を持つらしい)が、異物の結晶のように美しく燦めく作品である(って、言い過ぎか(笑))。

 ファスベンダー歌う、最後の歌も、物語中作られる曲のなかで、もっともシンプルなものでありながら、魅惑的である。

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