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2014年12月13日 (土)

『フューリー』──いかにして人は兵士となるか(★★★★★)

『フューリー』(デヴィッド・エアー監督、2014年、原題『FURY』)

 内田樹氏に言わせると、今は、「先の戦争と、これからある戦争との間にある時期」なのだそうだ。その考えに与するかどうかはべつとして、本作は、70年も前の戦争を描いたものでありながら、あたかも近代戦のような様相を呈している。「いま、そこにある、戦争」と言った感じがひしひしと伝わってくる。

 アメリカの元国務長官だったコンドリーザ・ライスは、クラウゼヴィッツ『戦争論』の愛読してたと言われるが、そこには、ナポレオン軍の「前衛隊」への考察が見られる。すなわち、戦場において、「本軍に行動開始の猶予と敵軍の実態および意図とをいち早く告げる」役目をしていた。ゆえに「いかにおしみなく人命を消費してしかるべきものであるか」が本質である。(『戦争論』中公文庫、清水多吉訳)

 本作のブラッド・ピットをリーダーとする戦車は、まさにそういう役割をしているように見える。「本土決戦」となり、戦場と化した一般市民のドイツの町を、「制覇」していく──。その「行程」がこの映画の「物語」である。

 そんな「前衛」にありながら、奇跡的に生き延びていた、「フューリー」という名の戦車。それは、ブラッド・ピット扮するリーダーの指揮力のおかげである。年季の入った4人組のなかに、入隊8週間のノーマンが加わる。実際のナレーターではないが、戦争の残虐さになじめないこの繊細な青年の目を通して、この戦争が語られていくように思われる。

 やがてこの青二才は、戦争のヒーローになっていく。ブラッド・ピットが、入隊したばかりで、戦場にも兵士たちにも嫌悪感を露わにしているノーマンに言う──。「Idea is peaceful, but history is brutal」(「考えは平和をめざしても、歴史は残酷なものだ」)。

 ピットがドイツ語をしゃべってドイツの町々を行く。不謹慎だが、それがなんとなくセクシーでさまになっている。たった4人で、何百というドイツ兵と立ち向かったことが非現実的であるといって、映画の評価を低めていたレビュアーがいたが、その人は、いったい映画になにを求めていたのか? まさか、ほんとうの戦争のリアルな映像を期待していたのではないだろうね? そういう精神構造の観客がそら恐ろしい。無冠のブラピには、本作で、なんらかの賞を与えられてほしいと、ファンでなくても思うのである。

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