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2015年2月 5日 (木)

『ジャッジ 裁かれる判事』──題名とはうらはらの癒やされる映画(★★★★★)(ネタばれ注意)

『ジャッジ 裁かれる判事』(デヴィッド・ドブキン監督、2014年、原題『THE JUDGE』)

 舞台は、主人公のハンクが「敏腕弁護士」として活躍するアメリカ中部の大都市シカゴを抱えるイリノイ州と、母の死によって、長い間帰ってなかった彼の故郷、おとなりのインディアナ州の田舎。会話のなかにさかんに出てくる政治家たちのエピソード、「いくら活躍しても、人は、晩年のボケした覚えていない」ハンクが父に向かって言う、レーガンは、イリノイの片田舎出身、リンカーンは長い間イリノイ州に居住していた。

 そんな保守的な街がハンクの故郷で、主人公の父は、清廉潔白な判事をしている。住民からは尊敬されることもあれば、疎まれることもある。この「公正すぎる」父親に、反目して不良となり、父から少年院へ送られた経験もあるハンク。父を恨み続けている。だが、父は、真っ正直ゆえ、孫を殺されたにもかかわらず、かつては温情をかけた服役者にスーパーで出会って、「孫と妻の墓に小便をかけてやる」と侮辱され、帰り道で、その男を故意に車で弾く──。

 帰省中の、敏腕弁護士の息子を雇わなければならなくなる。息子は、父を無罪にできる。しかし、父は嘘を言おうとはしないし、また、ガン治療中ゆえの薬の副作用による記憶喪失で逃れるというテも甘んじて受け入れようとはしない。なぜなら、自分がこれまで下した「ジャッジ」が無効なものとなってしまうから。

 これまでのアメリカ映画だと、やはりどこかを曲げて、めでたしめでたしとなるところだが、この判事の父は、正直を通し、第二級殺人犯(ハンクの力によって、「第一級殺人」(極刑を含む)は免れる)として、ガンにもかかわらず、数ヶ月服役することになる。ハンクが、出所する父を迎えに行き、晴れて川の上に浮かべたボートの上で、昔の思い出を語りながら親子で釣りを楽しんでいる最中に父は静かに息を引き取る──。

 アメリカ版『和解』といったところか。不良かつ敏腕で繊細なハンクのキャラクターを、ロバート・ダウニー・Jrが、魅力的に演じている。若い頃は粗野なイメージの強かったビンセント・ドノフリオが、よい老け方をして、野球選手の夢を絶たれて故郷で穏やかな暮らしをしている兄に扮している。アクターズ・スタジオ出身の演技派であった。元カノ、ヴェラ・ファーミガも、余裕のある大人の女が魅惑的である。そして、父、ロバート・デュバルも、あえて老醜をさらけ出し、みごとな俳優魂である。そういう手堅い演技の役者陣と、ていねいな心理描写で、ものものしい題名とはうらはらの、見ていてどこか癒やされる気持ちのいい映画となっている。

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