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2015年4月16日 (木)

『マジック・イン・ムーンライト』──恋愛の王道(★★★★★)

『マジック・イン・ムーンライト』(ウディ・アレン監督、2014年、原題『MAGIC IN THE MOONLIGHT』)

 これはですね、恋愛物語そのものなんです。しかも、ウディ・アレンだから、相変わらず「前衛」。もう達人の領域に達しているアレンは、べつに、落ち目のヒーローに舞台をやらせて、「前衛丸出し」風の映画にしなくても、デビュー作(『なにかいいことないかい子猫チャン』?『誰でも知りたがっているのになかなか聞けないセックスのすべて』?)以来、ずーっと前衛なんです。いつも、俗物を嗤いのめしながら、見せるところはちゃんと見せる恋愛の王道を撮る。

 だいたい観客が映画館になにを見にいくかといえば、つまるところ、美男美女の恋愛なのである。今回は、コリン・ファースとエマ・ストーン。いいですね、男は。もうコリン・ファース、54歳なんですよ。エマ・ストーンの母親のマーシャ・ゲイ・ハーデンより1歳下なだけですよ。

 ま、それはともかく、他の方の(プロも含めて)レビューを見ていると、この二人が、いつ恋に落ちたかのかを問題にしている。これは、決まってるじゃないですか。初めて会った、その瞬間ですよ。それが恋愛ってもの。おそらく、「波動」がピタっときたのでしょう(笑)。それからは、いかに「相手につれなくするか」が、恋愛道のテクなんです。だってそうでしょう? この映画の中の御曹司みたいに、最初から「きみはすばらしい!」「愛してる!」「なんでも買ってあげる!」なんてオトコ、どこに魅力がありますか? え? ヴァン・クリーフ&アンペル(スポンサーとしてクレジットあり)の宝飾品の類? 恋愛というものは、「お金では買えない」んです。そして、この映画、初めからハッピー・エンドはわかっている。さて、どうやってそこまで、紋切り型を避けて導くか。それが腕の見せ所なんです。今回もアレンはやってくれました。終盤の、ヴァネッサおばさんとスタンリーの会話がすばらしい。決しておしつけがましいことはいわないけど、会話でもって甥の本心を露わにしていく。

 でかい態度、一度も「きれい」と言わない、そんなオトコの「提案」を誰が受け入れる? しかも、私の薬指には、でっかいダイヤがあるんですからね。『金色夜叉』では、「みやさん」はダイヤモンドを取った。それは恋愛を知らない東洋の女だったから。西洋の女は、恋愛を知っている。そして、ウィットでお答えする──そういう映画なんです。どうぞ、若いみなさん、本作から恋愛のイロハを学んでください。

 あ、そうだ。皮肉屋スタンリー、自分のことを、「ぼくは、ミザントロープだから」と英語で言ってました。『ミザントロープ』、すなわち、モリエールの『人間嫌い』(の原題)。引用は、シェークスピアとニーチェだけじゃなかったんです。今回も、大金持ちをまんまと嗤いとばしました。快哉!

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