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2015年5月 7日 (木)

『皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇 』──これは何ですの〜(笑)?!(★★)

『皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇 』

(シャウル・シュワルツ監督、2013年、原題『NARCO CULTURA』

 一応題名から、フィクションと思って、客席に座って見ていたら、どうもドキュメンタリー(らしい)(笑)。でも、なんでフィクションかと思ったかと言えば、語り手がいて、その語り手が主役のような感じもしたし、物語めいた構成方法だったのだ。しかしやがて、ドキュメンタリーと気づいたのは、一向に「オハナシ」が見えない(笑)。ただ、最悪麻薬戦争の現場となったメキシコのある街を「取材」しているだけ。2013年の作だから、もしかして、あの「イスラム国」は、これをコピーしているのかも……。原題は、「NARCO CULTURA」スペイン語で、「麻薬密売人文化」という意味。この地で、流行っている、ナルコ・コリードなる音楽の歌手の生き様と、淡々と死体のデータを保存する警察官の生き様を対比させるように「描いている」。

 このナルコ・コリードなる音楽、ヒップホップと書いているレビュアーがいらっしゃったが、それはちがう。おそらくヒップホップをコピーしているのかもしれないが、まあ、ご当地ミュージックとでもいうのか(笑)。その歌詞の内容が、まさに、「麻薬密売人文化」を讃えているのだ。そういう「ミソクソ文化」に、頭の悪い青少年はあこがれ、同じようなアヤマチが繰り返されていく──。

 しかし、音楽は決して洗練されおらず、深みも、新しさもない。どこかで聴いたような、甘ったるいラテンの曲に、内容だけが、ナマの麻薬戦争を歌っている(それもそのはず、リアルの密売人に取材し、彼らの注文で作っているからだ)だけだ。『トラフィック』の世界だが、ああいう「けじめ」はどこにない。すべてが「けじめ」のない世界の話だ。ある密売人の若者は、一度だけ拷問したことがあるとインタビュアー(誰かわからない)に告白する。「なにも感じなかった。バットで後頭部を三回殴ったら、パカンと割れた」てなことを言っている。感じなかったが、「忘れない」光景だと言う。ここで、私は、その昔、アステカ文明だったかも、人身御供の頭部を切り離していたことを本で読んだのを思い出した。ここでも、ある種の麻薬を飲んで、残虐なことが容易にできていた。そう、麻薬をやっていれば、人間の感情を持たずに、同じ人間に対して残虐なことが「なにも感じずに」できる。

 それだけが、印象に残った、妙な映画だった。

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