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2015年6月28日 (日)

『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』──フィールドワークの憲法学者

『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』(水島朝穂著、2015年4月、岩波書店刊)  

 ある既存の思想があり、それに即して、今の政治がいいとか悪いとかいう著作家もけっこういる。そのなかで、いま、信頼できる著作家とは、フランスの人類学者、エマニュエル・トッドなどの、思想的にはごく普通の良識を持ち、思想的発言は、現実のデータや、具体的事実を提示して分析する学者、著者である。水島朝穂氏もそういったひとりであり、「集団的自衛権」が喧しくなるはるか以前から、政治と憲法を、具体的なデータ、現実的なできごとを丹念に取材しながら分析を続け、平和憲法遵守への提言を行っている。

 本書を読めば、いかに人々が一般市民も、政治家さえも、「集団的自衛権」なるものを、わかってなくて、やいのやいの言っていることがよくわかる。これは、自分は攻撃されていないのに、よそのヤクザに攻撃された隣町の「舎弟」の助っ人に出るようなものと、わざわざ「俗な表現」を使い、著者自らが説明している。

 自国が攻撃されたら、「最小限の武力で守る」、これが、従来の自衛隊の存在理由であり、それでも、違憲か合憲かが争われてきた。著者は当然、それさえ否定する立場である。なぜなら、他国から攻撃やテロは、暴力が暴力を生むだけであり、サッチャーが決断したフォークランド紛争で、イギリス、アルゼンチン合わせて、無駄に1000人の死者を出してしまった「戦争」が起こりうることもあるからである。あの「事件」は、本来、イギリスが話し合いに応じたら、回避できたとされる。それをサッチャーは不人気を回復するため、ヒーローとなったのである。同様の事態が、いま、日本の安倍政権にも起こりうる可能性を与えている。

 安倍政権は、ぎりぎり合憲としてきた「最小限度の自国を守る武力」=個別的自衛権をも踏みにじり、攻撃されてもいないのに、戦争ゲームに参加する道を歩み出そうとしている。

 そして、自衛隊など「軍隊」が教えられる戦闘術=銃剣などで確実に人を殺す、と、警察官が教えられる武術=犯人逮捕のため、脚などを撃つ武術の違い、地雷の構造なども、具体的な写真(水島自身が撮影している)も載せて、テッテイ的に「リアル」に説明されている。現実あっての法律であることが、とことんわかるように説明されている。それが「ライブ」のひとつの意味であり、リアルタイムで、ブログでフォローしていく、それがもうひとつの意味である。

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