« 2015年10月 | トップページ | 2015年12月 »

2015年11月

2015年11月16日 (月)

『コードネーム U.N.C.L.E. 』──イケメンふたりのキッチュなスパイもの(★★★★★)

『コードネーム U.N.C.L.E. 』(ガイ・リッチー監督、2015年、原題『THE MAN FROM U.N.C.L.E.』)

 正直申せば(笑)小学生の頃、見ていた記憶のある、『0011ナポレオン・ソロ』。黒髪のシブイオッサンのソロと、金髪マッシュルームカットのクリアキン。スパイものであったことはわかっていたけど、どーゆーオハナシかは見えず、なんとなくテープレコーダーが「消滅する」、『スパイ大作戦』(現『ミッション・インポッシブル』)の方が好みだった。しかし当時、クリアキンは、けっこー人気があった。かわいくて。そのクリアキンを、なんと、190センチ超の、アーミー・ハマーが演じる。このくらいでかいと、フツー、ジャイアント馬場みたいな顔になる(失礼(笑))のだが、顔はあくまで端整。そこが新しい魅力かなと思う。とにかく、ソロ役も、オッサンではなく、32歳イギリス・イケメン正統派のヘンリー・カヴィルで、これを、ガイ・リッチーがリメイクするなら、なにを差し置いても駆けつけなくっちゃであったが、実際、期待を裏切らないできだった。

 とくに、『007』や『M:I』のように、時代を現代にしていないところが、妙におしゃれ。1960年代前半まんまで作るには、けっこー難易度高いと思う。第一、「ハイテクのはじまり」ではあるが、今ほどハイテクでもなく、そこの「考証」が難しいし、そういう時代でも、「胸のすくスパイもの」に作るには技術がいる。しかし、あえてそういう難易度の高い設定にした甲斐はあって、キッチュなおしゃれ、手応えのある物語感、遊びのあるディテールで、久々映画を観る楽しみを味あわせてくれる。

 「ヒロイン」も、よく見かける英米女優ではなく、スウェーデンのアリシア・ヴィカンダーを起用し、身のこなしがハツラツ、かつかわいい。どこかアンナ・カリーナの香りのするコケティッシュが雰囲気を盛り上げている。

 いきなりのオープニングのタイトル・バックからして、「おおーッ!」と思わせるセンスだし、ダニエル・ペンバートンの音楽も心憎い。

 思えば、この時代から、国を超えて協力し合い、「国家を超えた悪」に挑まなければならない事態がはじまったとも言える。あ、そうそう。ヒュー・グラントの「上司」。わけわからんオッサンという感じだが、実年齢からすると、あんなもんだろう(笑)。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年11月12日 (木)

『サヨナラの代わりに』──切り札の見せ方(★★★★★)

『サヨナラの代わりに』(ジョージ・C・ウルフ監督、 2014年、原題『YOU'RE NOT YOU』)

 ホーキング博士を演じた、エディ・レドメインもそうであるが、病気によって普段とは違った体の動かし方をする演技というのは、病弱どころか、その逆の、しなやかな身体あってはじめて核心に迫る演技ができる。それを体現したのが、オリンピック選手レベル(とくに水泳)の運動神経の持ち主のヒラリー・スワンクである。二度のアカデミー賞を取っているのに、わりあい地味な存在で、しかしその演技をじっくり鑑賞すれば、それだけのことは納得させる演技力である。

 そういう「頑強」な身体を、「あえて隠して」の、ALSで全身が麻痺していく役柄である。結果は、患っているのに、どこか美しさ、優雅さが出ている。それでこそ、ほんとうにこの病気で苦しんでいる人々を貶めないということができる。一方、病気の彼女の世話をする、はみ出し野郎(女子ですが(笑))とのコンビは、当然、フランス映画の『最強のふたり』を思い出すが、そのエミー・ロッサムは、子供の頃からオペラを習っていた、最強の歌手であるが、イマイチ舞台にあがると怖じ気づいて歌えないという欠点を持つ、歌手志望の女子大生を演じている。これも、特技の歌をあえて「隠している」。

 物語は、何不自由ない生活のヒラリーは、弁護士でイケメンの夫、自分もピアニストとしてのキャリアを持っていた、と、ステロタイプの設定で始まる。友人たちとのリッチなつきあい──。しかし、どこかわざとらしさがつきまとっていることは、最初からなんとなく感じられる。それが突然の難病の発病によって崩壊していく。原題は、「あなたは、あなたではない」。つまり、「ほんとうのあなたは、もっとちがうはず」という意味が込められている。主人公ヒラリー・スワンクは、病気になることによって、エミー・ロッサムに出会い、ふたりは触れあうことによって、信頼しあい、ほんとうの自分に目覚める。それから、やはり案の定の展開になっていくが、ここでも、ふたりは、互いの演技力によって上質の見せ場を作り出している。

 とくに最後、「ダメ歌手」のエミー・ロッサムが舞台で最高の歌唱を見せるクロージングは鳥肌ものである。確かに涙なくして見られない作ではあるが、「ああこうやって切り札というものは見せるものか」と、そんなふうに感じさせられた。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2015年10月 | トップページ | 2015年12月 »