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2015年11月12日 (木)

『サヨナラの代わりに』──切り札の見せ方(★★★★★)

『サヨナラの代わりに』(ジョージ・C・ウルフ監督、 2014年、原題『YOU'RE NOT YOU』)

 ホーキング博士を演じた、エディ・レドメインもそうであるが、病気によって普段とは違った体の動かし方をする演技というのは、病弱どころか、その逆の、しなやかな身体あってはじめて核心に迫る演技ができる。それを体現したのが、オリンピック選手レベル(とくに水泳)の運動神経の持ち主のヒラリー・スワンクである。二度のアカデミー賞を取っているのに、わりあい地味な存在で、しかしその演技をじっくり鑑賞すれば、それだけのことは納得させる演技力である。

 そういう「頑強」な身体を、「あえて隠して」の、ALSで全身が麻痺していく役柄である。結果は、患っているのに、どこか美しさ、優雅さが出ている。それでこそ、ほんとうにこの病気で苦しんでいる人々を貶めないということができる。一方、病気の彼女の世話をする、はみ出し野郎(女子ですが(笑))とのコンビは、当然、フランス映画の『最強のふたり』を思い出すが、そのエミー・ロッサムは、子供の頃からオペラを習っていた、最強の歌手であるが、イマイチ舞台にあがると怖じ気づいて歌えないという欠点を持つ、歌手志望の女子大生を演じている。これも、特技の歌をあえて「隠している」。

 物語は、何不自由ない生活のヒラリーは、弁護士でイケメンの夫、自分もピアニストとしてのキャリアを持っていた、と、ステロタイプの設定で始まる。友人たちとのリッチなつきあい──。しかし、どこかわざとらしさがつきまとっていることは、最初からなんとなく感じられる。それが突然の難病の発病によって崩壊していく。原題は、「あなたは、あなたではない」。つまり、「ほんとうのあなたは、もっとちがうはず」という意味が込められている。主人公ヒラリー・スワンクは、病気になることによって、エミー・ロッサムに出会い、ふたりは触れあうことによって、信頼しあい、ほんとうの自分に目覚める。それから、やはり案の定の展開になっていくが、ここでも、ふたりは、互いの演技力によって上質の見せ場を作り出している。

 とくに最後、「ダメ歌手」のエミー・ロッサムが舞台で最高の歌唱を見せるクロージングは鳥肌ものである。確かに涙なくして見られない作ではあるが、「ああこうやって切り札というものは見せるものか」と、そんなふうに感じさせられた。

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