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2020年4月16日 (木)

【昔のレビューをもう一度】『さよなら、僕のマンハッタン』──ニューヨークに捧ぐ

◎なぜか、ザ・タイガースの『色つきの女でいてくれよ』(阿久悠作詞、森本太郎作曲)が口をついて出る。「さよならぼくの美少女よ、きりきり舞いの美少女よ」と始まるこの曲は、べつの女性歌手のカバーで、わがライブラリに入っている。

『さよなら、僕のマンハッタン』( マーク・ウェブ監督、2017年、原題『THE ONLY LIVING BOY IN NEW YORK』 )2018年4月16日 5時53分

マンハッタンの街で、文学作品からの引用が溢れ、スノッブたちの会話が乱れ、男女の思惑が入り乱れ……とくれば、ウディ・アレンの独壇場だろうが、本作は、まさにその通りなのだが、どこか激しい清々しさを感じさせる。それは、ニューヨークの街の隅々、どんな小さなものさえ美しく見せるカメラワークと、大学を出たばかりで、実家を出て住み始めたトーマスの、純真さ、彼を演じるカラム・ターナーの、生硬さが滲む初々しい容姿と演技も大いに影響しているだろう。
 製作総指揮の、ジェフ・ブリッジスが、キーパーソンの覆面作家を演じ、物語を不思議な魅力で彩っていく──。
 ニューヨークだから、すべてがさまになる。ニューヨークだから、「そういう物語」も信じられる。今さらサイモンとガーファンクルでもないだろうが、その曲が原題(「The Only Living Boy In New York」)であり、覆面作家が書いている作品もまさに同タイトルなのである。
 あり得ないような物語が、きっちりハマった演技派たちによってリアルさを帯びていく。トーマスの父親のピアース・ブロスナン、母親のシンシア・ニクソン、引っ越して来た謎の隣人のジェフ・ブリッジス、父の愛人の、ケイト・ベッキンセール。それぞれの俳優たちは、以前はまったく違う映画でスターであったが、今はひたすら、初な青年を盛りたてる。
 父は出版社を経営し、恵まれた環境にあった作家志望の青年だが、コネを拒否して自立の道を探る──。このあたり、日本とは大違いである(笑)。だから、文学が生きている。エズラ・パウンドもイエイツも、引用されても重みがある。
 あー、ニューヨークが呼んでいる!


 

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